売掛債権を保全する金融商品は取引信用保険だけではありません。
ここでは次の商品・制度についてご紹介します。
それぞれに一長一短があり、得意とする分野が異なっています。
なお、これは概要になります。詳しくはそれぞれの取扱会社等へご照会ください。
ファクタリング
ファクタリングはファクタリング会社(ファクター)が行う金融サービスです。
元々は14世紀後半にイギリスで生まれ、その後アメリカで発展した金融手法です。
現在は欧米を中心に世界各国で利用されています。
日本では、ファクタリング会社は大手金融機関の子会社と設立されるケースが多く見られます。
ファクタリングには様々なサービスメニューがありますが、
取引信用保険と類似した機能を持つサービスとしては、
「保証ファクタリング」と「買取ファクタリング」の2種類があります。
○保証ファクタリング
契約者が保有する売掛債権をファクタリング会社が保証するものです。
保証希望先リストに基づきファクタリング会社が1社ごとに保証枠を設定し、その保証枠内で売掛債権の保証を行います。
≪保証ファクタリングの特徴≫
①保証限度枠内で売掛債権の100%回収ができる
②対象とする取引先企業を任意に選択することが可能
保険の対象となる債権は継続的な取引から発生する債権に限られています。
スポットの取引は対象外です。
保証料の目安は、保証枠金額の3〜8%が多いようです。
取引信用保険と比べると取引先企業を任意に選択できる分、保証料は高くなる傾向にあるようです。
○買取ファクタリング
ファクタリング会社が売掛債権を買取り、その回収を代行するものです。
売掛債権の回収リスクがなくなると同時に売掛債権の早期資金化が可能になります。
手形割引に似ていますが、手形割引では決済されない場合にはお金を返さなくてはなりません。
買取ファクタリングではお金を返す必要はありません。
債権のオフバランス化が可能となり、キャッシュフローの改善にも役立ちます。
[買取ファクタリングにかかる費用] = [保証ファクタリングの保証料] + [利息]
一般的に買取ファクタリングを利用する場合には、取引先との間で包括的な債権譲渡の手続が必要となりますので、取引先に買取ファクタリングを利用していることは知られることになります。
○その他のファクタリング
●国際ファクタリング
輸出・輸入に関わるファクタリングです。
輸出ファクタリングはL/Cの代替手段として注目されています。
●一括ファクタリング
決済の手段に関するサービスです。
支払手形に代わる新しい決済手段として大手企業を中心に導入されています。
手形発行事務の効率化・印紙代の節減の効果があるとされています。
●下請債権保全支援事業
国土交通省が行う時限付中小企業支援策です。
ファクタリング会社が債権を保全して、国が補償を行うスキームです。
売掛債権担保融資保証制度(売債)
売債は、中小企業の資金調達の円滑化・多様化を図るために平成13年に創設された制度です。
中小企業が保有している売掛債権を担保として、金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会が保証を行います。
申込窓口は各金融機関です。
借入限度額は1億1100万円
保証料は0.85%
商品やサービスの提供を行い、実際に売掛債権が発生した段階で、それを引当に融資を申し込みます。
売掛債権が回収不能となり、中小企業が返済をできない場合には借入残高の90%を信用保証協会が中小企業に代わって金融機関に返済します。
対象となる売掛債権には制限はありません。
(ただし、決済サイトは1年以内)
スポット契約も対象となります。
経済産業省が中心となり積極的に推進をしていますが、取引先に債権譲渡通知などを行う必要があるなどの理由でまだまだ利用が進んでいるとは言い難い状況です。
倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)
独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う共済制度です。
取引先企業が倒産した場合に、積立した掛金総額の10倍まで(上限8000万円)を無担保・無保証人・無利子で貸付を行う制度です。
貸付金の償還期間は、6か月の据置期間を含めて5年間です。
ただし、貸付を受けると貸付金の10%に相当する金額が積立金から控除されます。
(例)
◆積立てた掛金 200万円
◆取引先が倒産し、800万円の共済金の貸付を受けた場合
[掛金]200万円−[控除額]80万円(800万円×10%)=[掛金残高]120万円
貸付が受けられる「倒産」とは、下記の2つのケースです。
○法的整理を申請する
○銀行取引停止処分を受ける
※「夜逃げ」「任意整理(私的整理)」の場合には、貸付金は受けられません。
◇平成22年7月から、弁護士等の関与する私的整理については、
倒産とみなして共済金の貸付対象となっています。
対象となる売掛債権には制限はありません。
スポットの契約も対象です。
下請債権保全支援事業 (事業期間が延長されました)
国土交通省が行う時限付の中小企業支援策です。
(事業期間は平成22年3月〜30年3月)
下請建設業者等が元請建設業者に対して有する工事請負代金等の債権を保全する事業です。
≪概要≫
○下請建設業者等が負担する保証料の2/3(上限4%)を助成する
○ファクタリング会社の支払額に対し95%の損失補償を行う
○事業を利用する下請建設業者等は年率1%の利用料を支払う